小説目次
ボタンをクリックすると開きます
ネットスラムに戻ると、最悪の知らせが僕たちを待っていた。
僕たちがマハと闘っている裏で、リョース率いるチームは『禍々しき波』本体と遭遇し、壊滅的な被害を被ったのだという。豚走隊は一人をのぞいて全員昏睡し、リョース自身も意識不明の状態に陥ったのだという。
僕は愕然とした。
ほんの少し前まで、今度こそこちらが攻める番だと息巻いていたのに。
なんてことだ。リョースが。土屋さんが。意識不明になってしまうなんて。
豚走隊で唯一「生き残った」のはリョースと同型PCを使うノグチという名のCC社社員で、役職的には課長補佐ということだった。
「波はワクチンを喰って抗体を作ってしまったようです。私たちにはそれをとめる手立てがなかった」
「それってつまり、もうワクチンが通用しなくなったってこと?」
ブラックローズが言った。
「どうするの? まだ八相が残ってるのに!」
「そ、そう言われましても……」
おろおろと絶句している。外見はリョースと同じだが性格はまるで違うらしい。
「彼を責めても仕方がないだろう」
それまで黙っていたバルムンクが言った。
「システム管理者のフォローを得られなくなったのは手痛いがな」
ワイズマンもうなずいた。
「確かに。戦力的にも大幅にダウンした。しかし、今ここでやめるわけにはいかない」
その通りだ。作戦を継続するしかない。今さら中止などできない。
「一応、改良型のワクチンを用意した。抗体を作られた以上、今までと同じ効果があるかどうかは怪しいけれど、それなりの威力はあるはず」
ヘルバが言った。
「作戦の継続は可能よ」
「やろう」
僕は言った。
「敵は僕たち以上に追い込まれているはず。このまま続けよう」
全員がうなずいた。
「それでは、皆、位置につきたまえ」
ワイズマンが言った。
「カイト、君は実行チームを編成して
のダンジョン最下層で待機!」
七体目の八相は、数字の「6」のような形をしたモンスターだった。
データ異常の際立つエリアで僕たちは八相を迎え撃った。
血の涙を流したり悲鳴のような泣き声を上げたりと、これまでの八相と較べてずいぶん薄気味悪いモンスターだったが、問題なくこれを倒した。
データドレインで判明した名前は「タルヴォス」とあった。
今のがタルヴォスだとすると……
「残りはあとひとつ。最後の波コルベニクだけだね」
ブラックローズが言った。
「いや」
僕は首を振った。
「まだクビアがいるよ」
(続く)