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第60話

ネットスラムに戻ると、最悪の知らせが僕たちを待っていた。

僕たちがマハと闘っている裏で、リョース率いるチームは『禍々しき波』本体と遭遇し、壊滅的な被害を被ったのだという。豚走隊は一人をのぞいて全員昏睡し、リョース自身も意識不明の状態に陥ったのだという。

僕は愕然とした。

ほんの少し前まで、今度こそこちらが攻める番だと息巻いていたのに。

なんてことだ。リョースが。土屋さんが。意識不明になってしまうなんて。

豚走隊で唯一「生き残った」のはリョースと同型PCを使うノグチという名のCC社社員で、役職的には課長補佐ということだった。

「波はワクチンを喰って抗体を作ってしまったようです。私たちにはそれをとめる手立てがなかった」

「それってつまり、もうワクチンが通用しなくなったってこと?」

ブラックローズが言った。

「どうするの? まだ八相が残ってるのに!」

「そ、そう言われましても……」

おろおろと絶句している。外見はリョースと同じだが性格はまるで違うらしい。

「彼を責めても仕方がないだろう」

それまで黙っていたバルムンクが言った。

「システム管理者のフォローを得られなくなったのは手痛いがな」

ワイズマンもうなずいた。

「確かに。戦力的にも大幅にダウンした。しかし、今ここでやめるわけにはいかない」

その通りだ。作戦を継続するしかない。今さら中止などできない。

「一応、改良型のワクチンを用意した。抗体を作られた以上、今までと同じ効果があるかどうかは怪しいけれど、それなりの威力はあるはず」

ヘルバが言った。

「作戦の継続は可能よ」

「やろう」

僕は言った。

「敵は僕たち以上に追い込まれているはず。このまま続けよう」

全員がうなずいた。

「それでは、皆、位置につきたまえ」

ワイズマンが言った。

「カイト、君は実行チームを編成して
Ωオメガサーバー 過酷なる 復讐の 傷跡
のダンジョン最下層で待機!」

七体目の八相は、数字の「6」のような形をしたモンスターだった。

データ異常の際立つエリアで僕たちは八相を迎え撃った。

血の涙を流したり悲鳴のような泣き声を上げたりと、これまでの八相と較べてずいぶん薄気味悪いモンスターだったが、問題なくこれを倒した。

データドレインで判明した名前は「タルヴォス」とあった。

今のがタルヴォスだとすると……

「残りはあとひとつ。最後の波コルベニクだけだね」

ブラックローズが言った。

「いや」

僕は首を振った。

「まだクビアがいるよ」

 

(続く)