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第37話

ブラックローズと別れてログアウトし、デスクトップ画面に戻ってみると、情報屋のリンダから再びメールが届いていた。

件名:おまけの情報
送信者:リンダ
本文:
オルカは黄昏の碑文についても調べてた。これについて知りたいのなら、ワイズマンというPCにたずねると詳しい話が聞けると思う。彼はトレード業専門なんだけど、趣味で『The World』のことを調べてるらしいんだ。ワイズマンはカルミナ・ガデリカのプチグソ牧場の横でトレードの店を開いてる。ちょっと頑固なところがある変人なので、へたに駆け引きするよりも直接会って素直に要望を伝えたほうがスムーズに行くかもね。

ではでは。君たちに夕暮竜の加護のあらんことを。

ありがたい情報だった。先の冒険で得たものは、結局僕はバルムンクに嫌われているという事実だけだったから。

そして、黄昏の碑文。

これはヘルバがリョースと議論した際に言った言葉でもある。

僕は重要な手がかりをつかんだような気がした。

さっそく再ログインすると、カルミナ・ガデリカのプチグソ牧場に向かった。

ワイズマンのことはすぐにわかった。

彼は足まで丈のある漆黒の服を着た白髪の呪紋使いウェイブマスターだった。賢者ワイズマンという名前の持つイメージそのままのPCだった。

「トレードのお客さん?」

と、ワイズマンが言った。年齢不詳の落ち着いた声だった。

僕はリンダのアドバイスどおり、素直に言うことにした。

「黄昏の碑文について、聞きたいんだけど」

「ふむ」

ワイズマンはつぶやくと、品定めするかのように僕をじろじろと見た。

「その情報は安くないよ、いくら腕輪を持つカイトの頼みだからと言ってもね」

「僕のことを知ってるの?」

彼はにっこりと微笑んだ。

「君たちはこちらの筋じゃ有名になりつつあるよ。腕輪を持つ双剣士ツインユーザーカイト。重剣士ヘビーブレイドのブラックローズ。他にも仲間たちがいると聞いたな……まあそれはいいとして」

彼は僕の方に身を乗り出すと両手をすりあわせるような仕草をした。

「時間を少しくれないか」

「時間?」

「そう。君の質問に対する答を用意するため。そして、君からいただく報酬を考えるための時間さ」

「報酬って、GPゴールドピースで払うんじゃないの?」

僕は驚いて聞いた。

「いつもはそうだ。でも今回はそうじゃない。ものがものだし、依頼人も依頼人だ。特別なボーナスがほしいような気がする」

そして穏やかだが有無を言わさない口調で僕の後ろを手で示した。

「返答は明日中にメールで送るよ。では、帰りたまえ。ごきげんよう」

 

(続く)