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第16話

ポスターの代償

 

一九九〇年六月のある朝、ボストンの大手ゲーム会社「ゲームズ&パブリッシング」で深刻な事態が持ち上がった。

コンピュータの端末に社員たちがアクセスすることができなくなっていた。

当初、システム管理者はそれほど気にしなかった。情報ネットが気まぐれを起こすのに日ごろから慣れていた。だがこの現象はどんどん広がって大きくなり、彼はうろたえ始めた。

システムを初期化するなどのさまざまな手段を講じたが、事態は改善されなかった。

外部の何者かによってパスワードが変更され、内部の情報をのぞかれてしまったのだ。

ボストンの警察は優秀だった。

「これが誰の利益になるか?」

この問いを徹底的に追求した。「ゲームズ&パブリッシング」に恨みを持つ者、ライバル会社、その他のかかわりのある人間が入念に洗い出された。

だがそれらしい容疑者は見つからなかった。

あとは電話通信のあとをしらみつぶしに調べるしかない。

所轄署から依頼を受けた捜査官がこの捜査に当たり、データを調べ上げた。ここ三週間にかけられた通話数は二万八千件をくだらなかった。

やがて異常な通話頻度の電話番号が浮かび上がった。

 

犯人は二人組の学生だった。

彼らは長年「ゲームズ&パブリッシング」の発売するゲームの熱心なファンだった。

だがある時、何かの手違いで、もらえるはずの特典ポスターが彼らに発送されなかった。

「ふざけやがって! こらしめてやらなくちゃ」

「ああ。僕らがアマチュアじゃあないってことを見せてやろう」

ゲーム会社は自分が犯した罪によって、その罰を受けなければならない。これが彼らの犯行の動機だった。

被害総額、実に二百四十万ドル。

懲役四年、執行猶予二年。

結局、ポスターは手に入らなかった。

 

(続く)