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第20話

ネット犯罪の複雑化

 

二〇〇四年頃になると、コンピュータ・ウィルスは、組織的犯罪に用いられる武器へと変貌した。

ハッカーたちが利益を得るための犯罪に手を染め始めたのか、それとも犯罪組織がハッカーに接近し彼らを取り込んだのか。

いずれにせよ、サイバー空間での犯罪が大々的に横行するようになった。

これまで国際犯罪の筆頭といえば麻薬や売春であったが、世界的な不況が訪れ、民間人は麻薬や売春にはあまり手を出さなくなった。犯罪組織はこういった世の中の流れには一般企業よりも敏感で、次の行動に移るのも早い。その彼らが次の市場として選んだのが模造品(海賊版)とサイバー犯罪なのである。

特にサイバー市場はすでに二〇一〇年の時点で一〇〇〇億ドルを越えるといわれ麻薬市場をしのぐほどに成長している。

また従来の犯罪もサイバー空間が絡むことが多くなった。マネーロンダリングを行う際に電子通貨を使用したり、ウェブサイトを使って違法な商品を販売したりするケースが多い。そういう意味では国際規模で行われる犯罪の大部分はサイバー・クライムであるといっても過言ではない。

当然、これらはハッカーたちの手によって行われている。

 

二〇〇〇年代半ばになると、ハッカーたちの手口は、それ以前と比べてはるかに高度化し複雑化した。

サイバー犯罪者たちが操るコンピュータはもはや数台どころではなく、それこそ数え切れないほどの台数に上がっている。おまけに二〇〇三年頃からハッカーたちは、共同で情報交換のためのサイトまで作り上げ、グループを組んで強力な新種のウィルスをばらまき、セキュリティの甘いコンピュータを手当たり次第に乗っ取ってボット化するという手口を使うようになった。

本来のユーザーが気づかないままに感染したコンピュータは水面下で組織化され、大規模なサーバー攻撃や大量のスパムメール送信など、闇の世界の利益になるすべての犯罪行為に荷担させられるのである。

それはまさに戦争と呼ぶにふさわしい状態だった。さまざまなウィルスによる被害が日常茶飯事のように行われていた。パソコンのメーラーには毎日のようにウィルス爆弾が十発、二十発と投下されてくるのである。

このような動乱のサイバー空間を平定したのが、ALTIMIT OSである。

 

(続く)