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件名:作戦参加者各位2
送信者:ワイズマン
本文:
リョース、ヘルバの報告を伝える。
リョースの報告。
>新たな意識不明者が発生したらしい。
>我が社の隠密部隊の動きが活発なことから、
>この情報は事実であると思われる。
ヘルバの報告。
>モニターした結果、
>
>エリアの容量が肥大。
>今のところ、他では目立った容量変化は見られない。
>まずはそこを叩くべきね。
報告を読んでもわかるように、
ヘルバの言うエリアが限りなく黒に近い。
作戦の実行を提案する。
作戦名:『
ネットスラムに集合のこと。
以上。
ワイズマンのメールを受け取り、僕たちは再びネットスラムに集まった。
だが人数は前回よりも数倍の大所帯となった。
作戦に携わる全員に招集がかかったからだ。
前回と同じ、僕、ブラックローズ、ワイズマン、リョース、ヘルバ。
豚走隊、ネットスラムの住人たち。
そして今まで冒険を続けるうちに知り合いとなった仲間たち。
エルクの姿もあった。ミアはやはりいないようだった。
皆を前にしてワイズマンが演説を行った。
彼によると、『消波作戦』とは、『禍々しき波』を迎え撃ち、消滅させるという意味を込めた名前なのだという。当初は消波ブロックのごく一般的な商品名を用いた作戦名を検討していたそうだが、システム管理者側から、「作戦名に商品名を冠するのは好ましくない」という指摘が出て没となり、現在の名称に変更されたらしい。最初の案の方がわかりやすくてかっこいいと思うけど。まあそういう理由なら仕方がない。
「以上で、私の話は終わりだ」
と、ワイズマンは言った。
「では、最後に、挨拶をお願いしたい」
そして僕を見た。
「準備はいいか? では、カイト。頼む」
「え?」
まったく僕はこの間のエルクのようにきょとんとしてワイズマンを見返した。
「ほら」
と、ヘルバが言った。
「さあ」
と、リョースが言った。
「うむ」
と、バルムンクが言った。
「あんたが言わないと始まんないでしょ」
と、ブラックローズが言った。
そんな。いきなり話を振られてしまった。
僕はおずおずと皆の前に立った。
そして何か言おうとして、ためらった。
これはまるで転校の挨拶みたいだ――そう思ったのだ。
そして、すぐ、いいや、と思い直した。
その場をやり過ごすためではない。前に進むための言葉を。
そう思ったら自然に言葉が口をついて出た。
「ワイズマンがつけた作戦名は、一人ひとりではどうにもならなくても、消波ブロックみたいに、力を合わせれば、強大な波の力も無力化できる……そういう意味だと理解しています。……皆さん、力を貸してください」
「腕輪所持者のお前から作戦の発動を!」
バルムンクが言った。「バシッと決めなさいよ」
ブラックローズが言った。「僕らに――」
一旦言葉を切り、大きく息を吸った。「夕暮竜の加護があらんことを! 『
「了解!」
は、見事に汚染されていた。
そのエリアの最深部で僕とブラックローズとバルムンクを待ち受けていたのは、雫をかたどった二対の石版のような薄っぺらいモンスターだった。
僕たちは、いつものように強制転送され、いつものように闘い、いつものようにデータドレインを当てた。名前は『ゴレ』と確認することができた。
相手にとってはタイミングが悪かったというほかない。
なにしろ僕たちは作戦開始を宣言したばかりで
仮にあのスケィスが二体コンビで出てきたって殴り倒せる。それくらいの勢いだった。
ゴレを倒した後、ヘルバからのショートメールが届いた。
「
『禍々しき波』本体。
つまり、一連の事件の元凶だ。
ついに捉えた。
そいつを倒せば、きっと意識不明者たちは回復する。
ヤスヒコが帰ってくる。
波はあと三体。もう片手で充分数えられる。
「逃げ出したか。反撃開始だな」
バルムンクがつぶやいた。
「反撃? 違うよ」
僕は首を振った。
創造主ハロルド・ヒューイックが『The World』で望んだもの。
アウラの成長。
「僕たちはハロルドが作ったゲームの本当のルールに、やっと気付いたのさ」
それは、アウラを手助けすることだ。
(続く)